ロレックス シードゥエラーについて~COMEXとの蜜月~

HOW ROLEX CONQUERED THE DEEP THE SEA-DWELLER

シードゥエラーは長時間 水中作業をするプロフェッショナルなダイバーへ向けて作られた腕時計です。
ロレックス好きであればご存知の潜水作業専門会社COMEX(フランス)との共同開発されたのは有名なお話。
COMEXのダイバーが着用したサブマリーナーが、作業終了後に時計内部のガスの影響で風防が破損したのがきっかけで誕生する9時位置のヘリウムガスエスケーブバルブや、同様に強度が落ちるサイクロプスレンズを外したデイト表示がシードゥエラーの特徴ですね。

■シードゥエラーの歴史

 The Trieste
1960 年に深海潜水艇「 トリエステ」号による海洋最深部への前例のない潜水に同行し、ロレックスは時計製造における歴史を作った。
1960 年 1 月 23 日、スイスの海洋学者のジャック・ピカールとアメリカ海軍大尉のドン・ウォルシュが乗った「トリエステ」号が太平洋のマリアナ海溝の10,916 m(35,814 フィート)という記録的な深さまで潜水した時、「トリエステ」号には試作モデルのロレックス ディープシー スペシャルが取り付けられていた。<ROLEX HPより>
1960 年 – 先駆的な潜水
スイス人海洋学者のジャック・ピカールとアメリカ海軍大尉のドン・ウォルシュ

1960 DEEP SEA SPECIAL

2012 年 3 月 26 日、ジェームズ・キャメロンが操縦する探査隊の潜水艇は、
海洋最深地点、チャレンジャー海淵の 10,908 m(35,787 フィート)に到達した。

COMEXとは何だろう?

COMEXは1961年 アンリ・ジェルマン・デァウゼ(デロウズ)(Henri Germain Delauze)がフランス・マルセイユで設立した世界初の潜水作業専門会社です。
アンリ氏はダイバーであり、エンジニアであり海洋地質学を学ぶ人物でした。COMEX(コメックス)は海洋調査、水中作業を主な業務とし
海中油田などの危険な高圧現場に耐えうる装備の「人(ダイバー)」や「ロボット」を投入します。
その専門性、技術が評価され世界的に有名な潜水会社となりました。
Le blog de Aqua Evolution - (9720)

Rolex presents: COMEX – Henri-Germain Delauze – YouTube

Rolex and COMEX, the leading pioneer in the field of deep, industrial saturation diving, have been partners since 1972. The late COMEX founder Henri Germain …
生前のアンリ氏の貴重な姿。
ディープシーのプロモーションですね。

ロレックス サブマリーナの故障

Diving & diving systems (9758)
前回の記事 ディープシー・チャレンジでも触れたのですが、
1953年に開発されたサブマリーナはトリエステ号の潜水テストで採取したデータを元に
そのスペックを向上させていきます。また、1961年の創設時より、その防水性を信頼しCOMEX(コメックス)のダイバーは
潜水作業時にサブマリーナを装備していました。1964年、COMEXのダイバーが装備していたサブマリーナの風防が吹き飛ぶ事故が起きました。作業を終え、水上に上がる際 酸素に混ぜたヘリウムガスが減圧に耐えれず膨張し内側から風防を吹き飛ばしたのです。
※飽和潜水時の加圧・減圧工程でヘリウムが混入した酸素を取り込むため腕時計に入ります。
通常のダイビングでは入りません。(飽和潜水は作業前後も過酷ななんですね)
The COMEX Link to the Rolex...

The COMEX Link to the Rolex Submariner, SEA-DWELLER & Jacques Cousteau

コメックスの報告を受け、ロレックスは腕時計内に残ったヘリウムガスを排出するバルブを搭載するモデルの開発に着手します。そして コメックスの協力を得て1967年 プロフェッショナル・ダイバーズウォッチ「シードゥエラー」が完成します。

ダブル・レッド

ダブル・レッド

Ref.1665 SEA-DWELLER (SUBMARINER 2000)
2000Ft(610m)防水を誇るシードゥエラーはケースの9時位置にガスエスケープバルブを搭載します。
プロフェッショナルのためのハイスペック・ダイバーの誕生です。
※画像は「ダブルレッド」と言われる、シードゥエラーとサブマリーナ2000の赤い記載があるレアモデル※1970年にはOMEGA×COMEXのプロプロフも共同開発されています。(同じく600m防水)ロレックスは 1972年にCOMEXの公式スポンサーになりました。
そして正式に COMEXのプロダイバー達にサブマリーナやシードゥエラーを支給することになります。
Rolex REF. 1665 Sea-Dweller...

Rolex REF. 1665 Sea-Dweller Janus IV World Record 501M, formerly belonging to the world renowned diver, Patrick Raude Raude. Made in 1977.

「海の居住者」と和訳されるシードゥエラー。ただ深く潜るだけではなく、長い時間(何日も)海中に留まり
過酷な環境で作業するプロフェッショナルを讃える名前なのですね。コメックスのダイバーの腕時計はロレックスにて永久保証されています。
※データを取るために整備も含めて回収・メンテナンスしているのでしょう。ただアンティークロレックスを時計ショップで買った方はCOMEXのダイバーではないので永久保証はされません。

Ref.5514

COMEX 5514

COMEX 5514

1964年の風防破損事故はRef.5513で起きました。
その事故をもとに開発されたRef.1665。
そしてRef.1665の開発段階で生まれた、レアモデル「Ref.5514」はご存知でしょうか?
※1967-68年頃の誕生Ref.5513の改良モデルとなり、市販されないCOMEXダイバー専用モデルになります。
※Ref5514の文字盤には「COMEX」の記載が必ずあります。基本設計はRef5513と変わりませんが、9時位置のヘリウムガス・エスケープバルブが特徴です。
(Cal1520、40mm、ドーム風防、200m防水)
Ref5513の上位モデルとして位置づけされるでしょうか。また保証書の出荷国ナンバーがCOMEX「119」となっています。
※COMEXへの支給品なら保証書が必要だったのか不明ですが、レア度増しでファンには嬉しいですね。ROLEX史上 Ref.5514と言う「COMEXだけ」の為のリファレンスナンバーが用意されたレアな事象ですね。
出荷国ナンバー「119」COMEX
出荷国ナンバー「119」COMEX

COMEX×ROLEXの証明

VRF: RIP Henri. Comex Parade. Wrist shots... (9717)
専用モデルRef.5514含め、COMEXのダイバーに支給されデータを採取するモデルは
当然ですが全て市販されていません。文字盤にCOMEXのプリントが無いモデルでも、裏蓋にその証明があります。
「COMEX」の刻印はじめ、「ROLEX/王冠」「支給ナンバー」「プロジェクト名」などが刻印されています。
 (9959)

COMEX×ROLEXのバリエーション

VRF: RIP Henri. Comex Parade. Wrist shots... (9719)
Ref.5513やRef.5514、Ref.1665は上記のとおり実際にダイバーが装備されていますので
ご周知頂けたかと思います。では、その他のダイバーズ・ロレックスにもCOMEX仕様はあるのでしょうか?
“Submariner and Sea-Dweller References used by Comex: 1970-1972/3 Submariner Reference 5513 with HEV (Helium Escape Valve).
• 1972-1978 Submariners Reference 5514 with HEV made for COMEX only.
• 1978-1979 Submariner Reference 1680 without HEV.
• 1977-1980 Sea-Dweller Reference 1665 with HEV.
• 1980-1984 Sea-Dweller sapphire Reference 16660 with HEV.
• 1982-1986 Submariner sapphire Reference 168000 without HEV.
• 1988-1989 Submariner Reference 168000 without HEV.
• 1986-1997 Submariner Reference 16610 without HEV.
• 1992-1997 Sea-Dweller Reference 16600 with HEV and sapphire crystal.
1997年 COMEX社は倒産(その後買収)しますが、
1961-1997年の間に発表されたロレックス・ダイバーズの全て(Ref5517除く)に
ダブルネームが存在しています。上のデータを見ますと・・・
Ref.5513 Ref.5514 Ref.1680(サブマリーナ・デイト)
Ref.1665 
そして
Ref.16660 Ref.168000
Ref.16610 Ref.16600また記載が無いですがRef.16650(1665/0)と言うリファレンスもあるようです。倒産時にかなりの数の流出があったと言われていますが、それも5桁モデルになるようですので、
やはりプレミアム・ロレックスの4桁モデルはかなりのレア度ですね。
VRF: RIP Henri. Comex Parade. Wrist shots... (9718)

Rolex - A review of the 5513 Comex (13387)

少し話がそれましたが、このようにシードゥエラーとコメックスの関係は深く結びついており、スティールモデルしかラインナップにないプロフェッショナル仕様が無骨で耐久性のある「海の男」の腕時計として人気を博しています。

REF.1665

コメックスの協力を得て1967年 プロフェッショナル・ダイバーズウォッチ初代「シードゥエラー」Ref.1665が誕生します。サブマリーナーをベースに設計されておりますのでオイスターケースのサイズは40mm、ムーブメントはサブマリーナー1680同様にクロノメーター認定のCal.1570(デイト表示付自動巻きムーブメント/19,800振動)が搭載されています。サブマリーナーと異なる点はケースサイド9時位置にあるヘリウムガスエスケープバルブと、サブマリーナーを凌駕する610m防水(飽和潜水に対応)。

またデイト表示はありますが破損事故の無いように拡大表示のためのサイクロップレンズがありません。

初期の1665には赤サブ(1680)同様に「SEA-DWELLER SUBMARINER2000」の文字が赤い「赤シード」と呼ばれるレア個体が存在します。ダブルレッドとも呼ばれれています。

REF.16660

1970年代後半(1978~)にリリースされた第2世代のシードゥエラーRef.16660。早々にプラスチック風防からサファイアクリスタル風防に切り替わりました、このことにより防水性を1220mまで伸ばします。ムーブメントも短期間製造のCal.3035(28,800振動/デイト早送り)に一新され、ヘリウムガスエスケープバルブも変更、現代モデルにかなり近づいた外観になっています。インデックスにはフチあり・フチなしがあり、初期のフチなしモデルが人気となっています。リファレンスナンバー(型番)の6が3つ繋がることから「トリプルシックス」のニックネームが付いています。

REF.16600

1991年にリリースされた第3世代のシードゥエラー Ref.16600。皆さんもご存じの5桁モデルですね、約17年のロングセラーモデルとなりました。変更点はムーブメントが名機Cal.3135になったことが1番大きいでしょうか。防水は変わらず1220m。初期モデルはトリチウム夜光を使用し90年代後半にスーパールミノヴァに変更されます。ケースサイド・ラグの横穴が2000年代に入り無くなります。最終シリアルは「V」となり2008年にディープシーへとバトンタッチします。最終国内定価609,000円(税込)。

REF.116600

シードゥエラーのラインはディープシーに移ったかと思われていた2014年、突如新作としてリリースされた第4世代のシードゥエラー Ref.116600(シードゥエラー4000)。40mmケースにセラクロム(セラミック)ベゼルを搭載した現代版として復活しました。当時はサブマリーナーデイトとの明確な差、ディープシーとの比較で思った通りの人気を得ることができず地味なスポーツラインとして扱われていました。防水性はモデル名通りの4000フィート=1220mのままです。9時位置にはヘリウムガスエスケープバルブがセットされています。最終国内定価1,069,200円(税込)。

REF.126600

1967年に誕生した「シードゥエラー」から50年、2017年に記念すべき第5世代のシードゥエラーが誕生します。ケースサイズは43mmと大型化し、次世代新型ロングパワーリザーブムーブメントCal.3235を搭載、ラグ幅を20mmから21mmに広げデザインバランスを整えた全く新しいシードゥエラーです。50周年記念モデルのため初代をオマージュしSEA-DWELLERの文字は赤く「赤シード」となっています。また見た目の大きな違いとしてシードゥエラーファミリーで初めてデイト表示を拡大するサイクロップレンズが搭載されました。国内定価1,166,400円(税込)。正規店のショーケースにはなかなか並ばないプレミアムモデルとなっています。

REF.116660

2008年 シードゥエラー16600のモデルチェンジとして新しく誕生したスポールモデルであり、ロレックス最大の44mmケースに3,900m/12,800フィート防水というモンスターなスペックを誇るプロフェッショナルを超えたダイバーズウォッチが、「DEEP SEA」Ref.116660です。搭載されたムーブメントこそCal.3135ですが、規格外のケースサイズに3900mという防水性がオーバースペック以外のなにものでもない「コンセプトウォッチ」なのでは?と思わせるほどですが、このモデルにより6桁スポーツモデルは飛躍的に進化していきます。2007年に誕生した「クロマライト夜光」2005年に誕生した「セラクロムベゼル」、そしてディープシーのための「リングロックシステム」、折り畳みのエクステンションパーツを不要とする「グライドロックシステム」など最新技術が惜しみなく投下されております。また3トンもの水圧に耐えるドーム型5.5mmのサファイアクリスタル、チタンケースバックなども特徴の一つですね。重さは220グラム、ケース厚は18mmもあります。普通体系の日本人男性にはフィットしません。国内定価1,242,000円(税込)。

ジェームズ・キャメロンの深海への挑戦 2D+3D ブル...

2012年ロレックスとナショナルグラフィック協会の協力を得て 世界最深のマリアナ海溝へ探査潜水することになった映画監督であり冒険家のジェームズ・キャメロン氏。目指す水深は約11,000m(約7マイル)。ロレックスの計算では水深15,000mではクリスタルにかかる水圧は17トン、裏蓋では23トンになり、既存のモデルでは当然 対応できません。

そこで、このチャレンジのために作られた試作時計のケース径51.4mmもあるディープシーチャレンジが機体に取り付けられました。(人間がつけられる時計じゃありませんね)

 (191337)

無事に単独潜水を成功させたジェームズ・キャメロン氏。良い笑顔です。

2014年 ジェームズ・キャメロン氏の偉業を讃え、深い深い海の底へ向けて潜水するイメージを文字盤に表現した新ダイヤル「Dブルー」がリリース(追加ラインナップ)されます。この美しいブルーグラデーションにキャメロン氏が搭乗したディープシーチャレンジ号と同じカラーのイエローグリーンで書かれた「DEEPSEA」の文字が特別なモデルであることを表しています。国内定価1,274,400円(税込)。レギュラーのブラックダイヤルに比べ30000円ほど定価が高くなっているのはブルーグラデーションダイヤルの製造にコストが多くかかるからでしょう。スティール製のデイトナより製造数が少ないといわれているDブルーは、常にプレミアム価格で推移しています。

REF.126660

126660

2018年 ディープシー誕生10周年を記念し新しく生まれ変わりました。外観の変更はあまりありませんが、次世代ロングパワーリザーブムーブメントCal.3235が搭載され、ラグ幅が広くなり文字盤6時位置に記載されている「SWISS MADE」の中央には「王冠(ロレックスロゴ)」が描かれるようになりました。116660同様にブラックダイヤル、Dブルーダイヤルの2カラー展開です。


次のページはシードゥエラーの人気に迫ります。